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駅無人化差し止め訴訟は「障害者のわがまま」なのか──交通弱者の移動の自由を考える【ニュース紹介19】

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はじめに

駅に人がいないことは、どんな影響をもたらすのだろうか。

JR九州の駅無人化訴訟の判決は、障害者だけでなく高齢者子どもを含む、多くの人に関わる問題であることを示している。

そしてその課題は、全国のローカル線にも広がり、国として向き合うべきものになりつつある。

「障害者のわがまま」「原告敗訴は妥当」──本当に、そう言い切ってしまって良いのだろうか。

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今回取り上げるニュース記事

駅無人化、障害者の損賠請求棄却 「配置維持はJR九州に負担」 | NEWSjp
JR九州が進める駅の無人化で列車の利用が制限され、憲法が保障した移動の自由を侵害されたなどとして、大…
「移動の自由を侵害」の訴え認めず 5年に及ぶ駅無人化訴訟で原告敗訴 大分地裁|OAB 大分朝日放送
駅の無人化によって、障害がある人の移動の自由を侵害されたなどとして、県民6人が、JR九州に無人化を止めるよう求めた民事裁判で大分地裁は原告の訴えを棄却しました。大分朝日放送(OAB)公式サイト。
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ニュースの要約

  • JR九州の駅無人化により移動の自由が侵害されたとして、車いす利用者視覚障害者ら6名が損害賠償と無人化の差し止めを求めた訴訟で、大分地裁は原告の請求を棄却した。
    • 裁判所は「無人駅で連絡や待ち時間が生じるのはやむを得ない」「駅員配置を維持させることはJR九州に過重な負担となる」と判断した。
  • 原告側は、無人化障害者差別解消法に反し、移動の自由を侵害すると主張したが、裁判所は“安全水準を一般的に下回る状態とは認められない”として退けた。
    • 一方で原告弁護士は「不当判決」と批判し、控訴の方針を示している。
  • JR九州は遠隔モニターや必要時の係員派遣などで合理的配慮を提供していると主張し、鉄道ネットワーク維持のため無人化は必要だと説明。
    • 現在、管内の約6割(340駅)が無人駅となっている。
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「福祉ウォッチャーT」筆者の意見

経営合理化と「移動の自由」のバランスは取れなかったのか

JR九州が鉄道ネットワーク維持のために経営合理化を進めざるをえない事情は、沿線人口の減少や高速道路の延伸、さらにはコロナ禍の影響を考えれば、理解できる。

しかしその一方で、今回の訴訟が示したように、障害者「移動の自由」が現に制約されていることも否定できない。

JR九州「障害者差別解消法」に基づく合理的配慮を提供していると説明するが、当事者側は「十分ではない」と感じている。

このギャップを埋めるには、JR九州障害者団体だけでなく、沿線自治体など行政も含めた建設的な協議が不可欠だと考える。

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これは障害者だけの問題ではない──高齢者・子どもを含む「交通弱者」全員が直面する課題

駅の無人化は、障害者だけでなく、公共交通への依存度が高い高齢者子どもにも影響する。

  • 高齢者の中には、足腰の衰えから電車とホームの段差を越えるのに苦労する方や、きっぷの購入や乗車の際に手助けが必要な方がいる。
  • 子どもが単独で鉄道を利用する場面では、駅員の存在が事故やトラブルの防止につながることもある。もちろん子どもの見守りにもなる。

また、駅員の不在で困るのは、特定の人だけではない。誰しも、年齢や体調、状況によって、以下のような「助けが必要になる瞬間」がある。

  • 脚をケガして、一時的に松葉杖を利用している方
  • 妊娠中で、移動に負担を感じている方

つまり、駅の無人化「障害者施策」だけでなく、地域の移動権保障全体の問題として捉える必要がある。鉄道事業者にすべてを丸投げするのではなく、行政がより積極的に関与すべき段階に来ているのではないか。

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国全体で取り組むべきでは──「交通税」などの制度設計を含めて

「障害者差別解消法」の遵守は当然として、交通弱者「移動の自由」を保障する観点からも、私は国の施策として取り組むべきだと感じる。場合によっては、公費による支援を検討して良いのではないか。

例えば、滋賀県が現在導入を検討している「交通税」のように、

  • 公共交通の維持
  • バリアフリー化の促進
  • 交通弱者への支援

を目的とした財源確保の仕組みは、一つの選択肢になりうる。

交通政策を、障害者施策・高齢者施策と横断的に捉え、全国的な制度整備や予算確保を、その一部として位置づけ直す時期に来ているのではないか。

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まとめ

駅の無人化は、誰か一部の人だけの問題ではない。交通弱者を含む多くの人が、日常の移動に不安を抱えうる現実がある。

だからこそ、鉄道事業者任せにせず、行政や国全体で「移動の自由」をどう保障するのかを考える必要があるのではないか。

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