精神障害者保健福祉手帳に今後望むこと
私が精神障害者保健福祉手帳制度に今後望む事は、次の4つである。
- 障害間格差の解消
- 医療費助成制度の拡充
- 有効期限の設定の柔軟化
- 手帳を持ちやすい社会環境の整備
以下、これらを具体的に説明する。
1. 障害間格差の解消
1つ目は、障害間格差の解消である。精神障害者は、身体障害者・知的障害者よりも利用できる福祉サービスが劣る状況が続いてきた。
もちろんこの格差を埋める取り組みは長年行われている。分かりやすい例が公共交通機関である。
公共交通機関における以前の障害者割引の対象は、あくまでも身体障害者手帳・ 療育手帳の所持者に限られた。精神障害者保健福祉手帳の所持者は対象ではなかったのである。

この状況に対し、精神障害の当事者やその家族・支援者が、精神障害者保健福祉手帳所持者も割引対象に加えるよう長年声を上げ続けた。
それに応える形で、JALやANAなどの航空事業者や、JR各社や大手私鉄などの鉄道事業者の多くが、近年精神障害者も障害者割引の対象に加えた。


それでも、精神障害者保健福祉手帳では割引しない交通事業者が依然としてある。またNEXCO各社などの高速道路・有料道路事業者は、精神障害者に対する割引を未だに行なっていない。引き続き社会に残る障害間格差を解消する必要がある。
2. 医療費助成制度の拡充
2つ目は、精神障害者保健福祉手帳所持者に対する医療費助成制度の拡充である。
精神障害者が利用できる国の医療費助成として、自立支援医療制度がある。ただしこれはあくまでも精神通院医療のみにしか使えない。精神科病院での入院治療は、この制度の対象外である。
それに加えて、精神科・心療内科以外で受ける医療(いわゆる「他科診療」)は、入院・通院を問わず対象にならない。


国は精神障害者に対して他科診療を含めた医療費助成を行っていない。それとこの取り組みを行う地方自治体は限られている。
身体障害者手帳・療育手帳の所持者に対しては、何らかの医療費助成を行う地方自治体が多い。これはどの診療科でも利用でき、入院・通院は問わない。
私としては、やはり国が「他科診療」を含めた医療費助成を行うべきだと考える。少なくとも、1級・2級の精神障害者保健福祉手帳所持者については、医療費の自己負担割合を1割に引き下げてほしい。
1級・2級の手帳所持者の多くは、精神障害の影響により就労が困難である。精神医療以外の医療を要する方もいるが、就労の難しさゆえの低収入により、一部は高い医療費負担を懸念して「受診控え」をしている。
精神障害者にも必要な医療を受ける権利を保障するために、医療費助成の拡充は必要だろう。
もちろん一部の身体障害者・知的障害者対象の福祉医療費助成についても同様に、地方自治体ではなく国がやるべきである。
3. 有効期限の設定の柔軟化
3つ目は、精神障害者保健福祉手帳の有効期限の設定を柔軟にしてほしいということである。
この手帳は、原則として2年の有効期限がある。2年経過後に引き続き各種支援制度・サービスを要する場合は、手帳の更新手続きが必要となる。この2年という有効期限を、今後はもう少し柔軟に設定できないだろうか。
精神疾患・精神障害による生活のしづらさや必要な支援の度合いは、治療の進み具合や環境によって左右される。時間の経過で病状の変動があるため、有効期限の設定自体は必ずしも不合理とまでは言えない。
だが、十分に治療しても改善が見込めない場合や、症状はほぼ固定したものの生活のしづらさが残る場合には、手帳の有効期限を2年より長くしても良いのではないか。
次にASDやADHDなどの発達障害(神経発達症)によってこの手帳を持つ場合には、有効期限を5年や無期限に延長できるような特例を今後設けられないだろうか。
発達障害は先天性で、現状の医学では根本的には治療できない。近年ADHDの傾向を改善する薬があるものの、その効果は一時的なものに過ぎない。
子どもの時に判明すれば、療育により生活の難しさが軽減されることもある。しかし、十分な療育を行っても社会生活の困難さが残る人もいる。
それに成人してから発達障害が分かることもある。この場合は療育を受けられず、生きづらさを抱えながら暮らし続ける可能性も考えられる。
要するに発達障害の方で、手を尽くしても十分な改善の可能性が見込めない場合は、手帳の有効期限を5年など通常より長くしたり、期限をなくすなどの対応ができないだろうか。


4. 手帳を持ちやすい社会環境の整備
4つ目は、精神障害者保健福祉手帳を持ちやすいような社会環境を整備することである。特に手帳による支援制度・サービスを必要とする方が、遠慮なくこの手帳を持てるようにすることが重要である。
精神障害者保健福祉手帳の所持者は年々増えている。そのこと自体は決して悪いことではない。
それでも、精神疾患・精神障害に対する差別偏見や手帳制度の理解不足により、手帳を提示しても受けられるはずの制度・サービスが利用できない事例や、当事者にとって不快な対応を取られる事例も私は聞く。
このような事例をなくすためにも、引き続き行政が先頭に立って、こころの病気に関する正しい理解の促進や、精神障害者保健福祉手帳の周知徹底などを行ってほしい。


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