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精神保健福祉士の精神疾患当事者が「クローズアップ現代」(2月12日放送分)を見て【心の病・精神障害】

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精神疾患当事者として私が今後日本の社会に望むこと

精神医療をより気軽に受診できる環境にして欲しい

精神医療を受ける心理的ハードルを下げる

私は今でもかかりつけの心療内科のある建物に入る際、周りの目が気になることがある。周りの様子をうかがいながら心療内科の入口のドアを通ることもある。

例えば風邪をひいて内科を受診する人も多い。精神医療もそのぐらいに気軽に受けられる環境になってほしい。

このことを実現するためには、精神疾患(心の病・精神障害)に対する社会的な理解を深める必要がある。それと同時に精神疾患に対する差別・偏見の解消も求められる。

最近有名芸能人が精神疾患を抱えていることを公表する機会が増えた。

例えばPTSD(心的外傷後ストレス障害)を公表した元フジテレビアナウンサーの渡邊渚さん(報知新聞社 2025)や、うつ病を抱えながら芸能活動に取り組む最上もがさん(元でんぱ組.incメンバー)がいる。(マイナビ 2025)

また精神疾患当事者が自らの病気の体験を多くの人の前で話す機会が増えた。私自身もピアサポート活動をしていた時、何度も精神医療保健福祉関係の支援者や行政職員に対して自分の経験を発表する機会があった。

どちらも精神疾患の存在を社会に広める効果があると思われる。精神医療の受けやすさにも関係する。精神疾患に悩む当事者や家族にとってはプラスになりそうである。

地域で精神医療を提供する診療所を増やす

それに加えて、地域に必要十分な数まで精神科・心療内科といった精神医療を行う診療所・クリニックを増やすことも重要である。

地域住民がメンタルヘルスの不調を感じた際に、もし地域に精神科・心療内科クリニックが少なければ、初診までに長期間待たなければならないことがある。精神的なつらさを感じる人にとって、初診日が先になることは、さらなる精神的な負担になる。

また住民の住む地域では精神医療を受けられず、わざわざ遠くにある精神科病院まで通わなければならないこともある。精神疾患当事者は多くの場合定期的に通院することになる。近くで精神医療を受けられることが、当事者本人の心身の体調維持の観点から望ましい。

地域で受けられる医療・福祉サービスをもっと手厚くして欲しい

地域の社会資源の拡充

精神疾患を持つ多くの人にとって地域生活に必要なものは精神医療だけではない。地域生活を支えるための福祉サービスも同様に必要である。

例えば家族と同居する精神疾患当事者にとっては、自宅以外で過ごせる場所があると望ましい。このことは当事者の家族にとってもメリットがある。例えば当事者本人を家族のみで抱え込まずに済む効果がある。家族の精神的な負担も一定程度は軽減されると思われる。

精神疾患当事者が自宅以外で過ごせる場所の例としては、以下のようなところが挙げられる。

  • 自由に過ごせる「地域活動支援センター」などのサロン事業
  • 継続して通うことで生活力を高められる「自立訓練事業所(生活訓練)」
  • 一定の支援を受け作業しながら過ごせる「就労継続支援(A型・B型)事業所」

それと日常生活について困りごとが生じた際、専門の相談員が困りごとを聴く相談支援サービスも必要だろう。

なお一人で暮らす精神障害者にとっては、一人暮らしを応援するためのサービスが求められる。例えば障害福祉サービスにおける「居宅介護(ホームヘルプ)」が挙げられる。
体調が悪くどうしても家事(食事作り・掃除など)が難しい時にも、ホームヘルパーによる援助を受けられる。

次に地域で受けられる医療サービスに関係して、精神科訪問看護の拡充をお願いしたい。

精神科訪問看護サービスでは、かかりつけの精神科医療機関と連携しながら、看護師などが本人の自宅を訪問して、心身の体調確認や助言などを行う。精神疾患を持つ人が安心して精神医療を継続するためのサービスとしても活用できる。

医療費負担のさらなる軽減

一方精神疾患当事者やその家族にとっては、通院医療費を軽減するための国の制度として、「自立支援医療制度(精神通院医療)」がある。

またお住まいの自治体によっては、この「自立支援医療制度」とは別に自治体独自の医療費助成制度を用意している。

例えば所得の低い人に対して「自立支援医療制度」の自己負担分を公的に助成する自治体や、精神障害者保健福祉手帳所持者に対する福祉医療費助成制度を用意する自治体もある。

ただし自治体によって受けられる医療費助成に差がある現実もある。この状況に対して、精神障害者保健福祉手帳所持者に対する(「自立支援医療制度(精神通院医療)」適用分を含む)保険診療の自己負担率の引き下げを国の制度としてできないだろうか。

国や地方自治体は「過去の反省」を踏まえるべき

日本政府は精神疾患を抱える人の処遇について、かつては社会から排除して精神科病院に入院させるような政策をとっていた。簡単にいうと、精神疾患を持つ人を地域社会で暮らせるように支援するのではなく、(全員ではないものの)精神科病院にいわば「隔離収容」していた。

その後一部の精神科病院の「人権軽視」ともいえる劣悪な入院環境や、「社会的長期入院者」の存在などが大きな問題になった。国際的な人権問題になったこともあり、日本政府はようやく精神科病院入院者の「地域移行」に取り組むようになった。

日本における精神病床数(入院精神医療を行うベッド数)は少しずつ減少しているのだが、依然として世界的に見てかなり多いことが指摘されている。

国や地方自治体といった行政は、上記のような過去の精神疾患を抱える人への処遇に対する「反省」を踏まえ、本腰を入れて精神保健医療福祉施策精神疾患・メンタルヘルスに関する啓発などに取り組んでほしい。

参考文献

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