生活保護制度における国の自動車所有の考え方
厚生労働省の公式な説明
厚生労働省のWebサイトで公開されているPDF文書「『生活保護制度』に関するQ&A」の4ページ目によると、自動車を持っている場合の生活保護の受給について以下のように記載されている。
Q.7 自動車を持っていても、生活保護を受給できますか。
A.7 自動車は資産となりますので、原則として処分していただき、生活の維持のために活用していただくことになります。ただし、障害のお持ちの方の通勤、通院等に必要な場合等には自動車の保有を認められることがあります。お住まいの福祉事務所にご相談ください。
厚生労働省Webサイト「『生活保護制度』に関するQ&A」4ページ目
要するに自動車は原則として資産扱いになる。資産は売却し生活費に充てることになる。ただし事情によっては自動車を所有しながら生活保護を受給できる場合がある。したがって厚生労働省は「どんな場合でも自動車を売却しなければいけない」とは言っていない。
生活保護の実施要領
先に述べた厚生労働省の説明について、具体的に示されているのが「生活保護法による保護の実施要領」である。この要領に記載されているもののうち、自動車の保有に関する部分を私なりにまとめたものは以下の通りである。(厚生労働省 発行年不明b)
なおこの要項をそのまま引用すると非常に長くなってしまう。詳しく読みたい方は貼り付けたリンク先から参照してもらいたい。それとこのリンク先に掲載されている要項は2023年4月施行に向けての「改正案」だが、引用した部分については改正前から変更されてはいない。
通勤用自動車について(17ページ 問(第3の9))
- 障がい者の場合で、自動車以外に通勤する方法がない場合、または極めて困難な場合は保有が認められる。
- それ以外の人の場合は、居住地または勤務先が公共交通機関の利用が著しく困難な地域の場合、もしくは(公共交通機関が利用できない)深夜勤務等の場合に、保有が認められることがある。
通院・通所・通学用自動車について(19ページ 問(第3の12))
- 障がい者や公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む人については保有が認められることがある。
- ただし送迎サービスなど他の手段がないことや、タクシーの利用よりも合理的であること、車の処分価値が小さいことや維持費を確実に賄えることなど要件がある。
- 障がい者の場合のみ、満たしていない要件があっても特段の事情があれば保有が認められることがある。
自動車の買い替え(更新)について(20ページ 問(第3の23))
- 事故や大きい故障等で使用に耐えない状態になった場合、事前に相談すれば認められることがある。
- 買い替え費用は費用援助や保護費をやりくりしてできた預貯金で賄う必要がある。
生活保護申請時にすでに所有している自動車について(18ページ 問(第3の9の2))
- 申請後半年以内に就労で保護を脱却できることが確実に見込まれる場合は、維持費が高額の場合や処分価値が高額になる場合を除き、ただちに売却処分の指導を受けることはない。
- ただし「(半年から延長して1年の)期限付きで車の処分指導が保留になる」という扱いなので、原則として車の利用は認められない。
- なお公共交通機関の利用が著しく困難な場合は、求職活動での車の利用が認められることもある。
- 保留にできる期限が来たら、原則として処分指導を受けることになる。
参考文献
- 厚生労働省(発行年不明a)「『生活保護制度』に関するQ&A」(2024年6月19日アクセス)
https://www.mhlw.go.jp/content/001106332.pdf - ―――(発行年不明b)「2023(令和5)年4月1日施行 生活保護実施要領等」(2024年6月19日アクセス)
https://www.mhlw.go.jp/content/001071315.pdf
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