資格を取得しても、精神保健福祉士として活動することは簡単ではない
1. コミュニケーションをうまく取れるのかどうか
発達障害や精神障害の当事者が無事精神保健福祉士の資格を取ったとしても、実際にこの資格を活かして活動する際には高いハードルがある。
1つ目は、先ほど述べた精神保健福祉士に求められる繊細なコミュニケーションが実際にできるのか、ということである。
患者や利用者との意思疎通は、大学や専門学校で勉強する際に教科書に書いていたことや、実習で確認したことを思い出しながら、実際の医療福祉の現場で取り組まなければならない。
ところが障害特性によっては、「どう頑張っても学んだことができず、意思疎通が難しい」という事態に遭遇するかもしれない。
意思疎通が十分できなかった結果、相手を精神的に傷つけることや、逆に自分自身を傷つけてしまう事態が起こることも想定される。
2. 自分自身の「障害」の捉え方
2つ目は、自分自身が「障害」についてどう捉えるのかということである。そもそも精神障害・発達障害を卑下している精神保健福祉士はいないと私は信じたい。ただ障害のある人の中には、「自分は健常者と比較してどうしても劣っている」と感じる人もいる。
障害を持つ精神保健福祉士の中には、いわばこのような「障害による劣等感」との闘いをする人もいるかもしれない。私はこの劣等感を支援対象の相手に持ち込むべきではないと思う。
これは人権意識にも関係する。そもそも障害の有無に関わらず、人権は保障されるのである。
そのためには自分自身の障害を受容することが求められる。「他人と比べなくても良い。自分らしく活動しよう」と思えれば、支援を行う患者や利用者にもそれが伝わるはずである。
3. 自分自身のメンタルケア
3つ目は、自らのこころのセルフケアについてである。
そもそも発達障害・精神障害を持つ精神保健福祉士の中には、メンタルヘルスの脆さを抱える人もいる。
患者や利用者と会話を重ねるうちに、相手と自分自身それぞれの病気・障害や生きづらさを重ね合わせる機会がどうしても出てくる。
それによって援助を行う自らが辛くなったりこころが傷ついてしまったりすることもある。
ただでさえ脆さを抱えるこころにダメージが加わると、容易に自分自身が心理的に病んでしまうのである。
発達障害や精神障害を持つ精神保健福祉士は、そうならないように、自らのメンタルヘルスの状態をよく理解し、盛大に病んでしまう前に傷ついたこころをセルフケアできる能力をなおさら強く求められる。
前編のまとめ
- 発達障害や精神障害の当事者が精神保健福祉士の資格を取得しようとする場合、取得するまでの学習の段階、取得後に資格を活用する段階のどちらにも難しさがある。
- 精神保健福祉士の取得までの学習の段階では、「日々の勉強」「2回ある実習」「国家試験」の3つが発達障害・精神障害の当事者にとって高いハードルになると思われる。
- 精神保健福祉士の資格取得後には、「意思疎通」「自らの障害の捉え方」「自分自身のメンタルヘルスケア」の3つが発達障害・精神障害を持つ人には高いハードルになりそうである。
前編をご覧いただきありがとうございました。後編はこちらからどうぞ
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