「カウンセラー」と呼ばれる人々の違いについて
「（専門）カウンセラー」とは
「（専門）カウンセラー」は、心理学に関する高度な専門知識を持ち、体系的な理論や技術を用いて相談に応じる。臨床心理士や公認心理師といった高度な心理系資格を持ち、社会的信頼性が高い。
臨床心理士は、「日本臨床心理士資格認定協会」が認定する心理専門職の民間資格である。多くの場合、同会が指定する心理系の大学院修士課程を修了し、資格審査に合格する必要がある。
この資格は、後で述べる公認心理師より前から存在し、他の民間資格よりも格段に高度な専門教育を受けないと取得できない。また精神保健医療福祉関係など、臨床心理士資格の所持を必須要件とする求人がある。
公認心理師は、2017年の「公認心理師法」に基づく心理職の国家資格であり、心理学に関する専門的知識・技術をもって、保健医療・福祉などの分野で相談援助などを行う。
名称独占の資格であり、資格のない者が「公認心理師」「心理師」と名乗ることはできない。
「ピアカウンセラー」（「当事者カウンセラー」）とは
「ピアカウンセラー」は、「（専門）カウンセラー」とは違い、病気・障害当事者としての経験・立場を基盤とし、「同じ経験を持つ仲間」（ピア・peer）として主に他の障害当事者の相談に応じる。
最近は障害福祉サービス事業所に所属する「ピアサポーター」「ピアスタッフ」が、この役割を担うことが増えてきた。
また、病気・障害の当事者であることを着目すれば、「当事者カウンセラー」とも表現できる。
現在のところ、「ピア・当事者カウンセラー」としての十分な知識・能力を示し、かつ社会的に認められた資格はないと思われる。
なお、ピアカウンセリングを含むピアサポートに関わる公的な研修として、都道府県等が主催する「障害者ピアサポート研修」がある。この研修の中で、ピアカウンセリングの基礎知識を学ぶ。
ただし基礎・専門・フォローアップの各研修をすべて受講したとしても、計6日間である。「ピア・当事者カウンセラー」として十分な知識・経験を得るには極めて短い。
ピアサポートや障害者ピアサポート研修は、過去に当ブログで取り上げた。ぜひ以下の記事もあわせてご覧いただきたい。
なお「ピア・当事者カウンセラー」として活動する人の中には、一定の社会的信用性があり、対人援助に関わる資格を持つ人もいる。
その例としては、先ほど述べた臨床心理士・公認心理師のほか、社会福祉士や精神保健福祉士といった福祉の相談援助に関わる国家資格がある。また看護師・保健師などの医療系国家資格もおそらく含まれる。
「野良カウンセラー」や「自称カウンセラー」とは
「カウンセラー」の中には、心理に関する高度な専門教育を受けず、十分なカウンセリングの基盤がない方もいる。このような方を、「野良カウンセラー」や「自称カウンセラー」と呼ぶ場合がある。
その多くは、個人的な思い込みや独自の方法で相談に応じている。カウンセリングに関する（臨床心理士以外の）民間資格を持つ人もいるが、心理に関する専門知識・技術は、臨床心理士や公認心理師と比べて足りず、社会的信頼性が低いことは明らかである。
高度な専門教育を受けた「（専門）カウンセラー」と比較して、相談者を精神的に傷つける可能性が高いなど、「野良・自称カウンセラー」への相談にはリスクが大きいことは否定できない。
この項のまとめ――3種類の「カウンセラー」の比較
今までの話を踏まえて、「（専門）カウンセラー」「ピア・当事者カウンセラー」「野良・自称カウンセラー」の3者の違いを整理すると、以下のようになる。
| 種類 | 相談の基盤 | 特徴 | 信頼性 |
|---|---|---|---|
| （専門） カウンセラー （臨床心理士・公認心理師） | 心理学に関する 高度な専門知識・技術 | 高度な専門知識に 基づき、体系的な 理論・技術で支援する | 社会的な信頼性は 高い |
| ピア・当事者 カウンセラー | 病気・障害当事者 としての経験・立場 | 同じ経験を持つ 仲間として寄り添う。 対等性が高い | 資格制度は未整備。 経験や姿勢次第。 信頼できるカウンセラーもいる |
| 野良・自称 カウンセラー | 特に基盤はない （高度な心理の専門 知識・技術はなく、 当事者としての経験・ 立場もない） | 個人的な思い込みや 独自の方法で活動。 責任の所在が不明確 | 信頼性は低い。 相談者を傷つける 危険性がある |
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