イベントレポート:みんなねっと京都大会(9月6日)

2025年は京都で行われた「みんなねっと大会」
2025年9月6日に、京都テルサで行われた「みんなねっと京都大会」に参加した。「みんなねっと大会」は、全国の家族会関係者が一堂に会し、最新の課題や取り組みを広く共有する場である。
午前:非常に印象的だった高木俊介氏の基調講演
午前のプログラムの中で、精神科医・高木俊介氏による基調講演では、日本の精神保健医療福祉が直面する課題が次々と提示された。
講演では以下のようなテーマが挙げられた。
- 精神障害者を含む「社会的弱者」を排除する最近の社会の動向
- 重度の精神疾患を持つ人に対応できる精神科医療機関の少なさ
- 「金儲け」に走る一部精神科医療機関の問題
どれも現場に深く関わる人ほど切実に感じるテーマである。
高木氏はユーモアを交えた語り口で会場を和ませつつ、核心を突く話を続け、聴衆の心をしっかりとつかんでいた。ときおり会場から笑いが起こったが、話題が核心に迫ると空気が一気に引き締まったように感じた。
午後:交通機関の運賃割引運動に関する分科会に参加
粘り強く取り組んだ「みんなねっと」
午後は、精神障害者の公共交通運賃割引をテーマにした分科会に参加した。まずはみんなねっとが長年取り組んできた活動の振り返りから始まった。
JRグループや大手私鉄各社に対して、粘り強く対話を重ねた結果、2025年4月までに精神障害者への鉄道運賃割引が実現した。その裏には、関係者の地道な交渉と多くの苦労があったことが語られた。
現状の鉄道運賃割引制度の課題
また今後に向けての課題についても取り上げられた。多くの大手鉄道事業者の障害者運賃割引は、旧国鉄の制度を継承する形で行われている。
以前当ブログでも説明したように、今のところ、多くの大手鉄道事業者では、以下のような制約がある。
- 「単独乗車では片道100kmを超える乗車券でないと割引にならない」
- 「初乗り運賃から割引になるのは介助者がいる場合のみ(第2種は介助者がいても割引対象外)」
- 「特急券は割引対象外」
これらの条件により、障害者割引制度があっても実質的に使えない人を生んでいる。
なおこの件に関する詳細を、以下の記事で解説している。ぜひご覧ください。
原昌平氏の改善に向けた提案
この状況を改善するために、シンポジストの一人である原昌平氏が「興味深い提案」をされた。多くの参加者がうなづきながら原氏の話に耳を傾けていたことが印象的だった。
原氏は障害者割引の拡大のために、身体障害・知的障害の関係団体と連携することや、鉄道事業者とともに国に働きかけることを伝えられた。
また、政府が福祉施策ではなく、「交通弱者」(障害者だけでなく高齢者や過疎地の住民など)対策として取り組むことや、そのために国が道路整備に割く多額の予算を多少でも鉄道や路線バスに振り分けることを提唱した。
確かにこれなら障害者以外も恩恵を受けられる。乗客減少や運転士不足による鉄道の廃線・路線バスの減便・廃便など、交通インフラの維持はますます大きな課題になっている。福祉施策で取り組むよりも国民の納得感を得られる可能性は高い。
私は障害者運賃割引をより幅広く、交通施策と関連させながら捉える必要性があると実感した。
質疑応答での筆者の発言
なお私は分科会後半にあった質疑応答の時間で、少しだけ発言させていただいた。
交通系ICカード利用による障害者割引の対応拡大や、東海道・山陽・九州新幹線のインターネット予約サービス「EX予約」および「スマートEX」によるチケットレス乗車の障害者割引対応についても、今後みんなねっととして取り組んで欲しい旨を伝えた。
すると別の参加者から「より障害者割引きっぷを買いやすくして欲しい」といった関連する要望が出るなど、反響を生むことができた。それに加えて原氏や他のシンポジストからの発言を引き出せた。
こうした意見交換を通じて、私は少なくとも障害者運賃割引に関する課題解決に向けての一定の方向性を感じた。今後の議論や取り組みの広がりに期待したい。
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