精神障害者保健福祉手帳とは
精神障害者保健福祉手帳制度の概要
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神疾患や発達障害(神経発達症)により、長期間にわたって日常生活や社会生活に難しさを感じる人を対象とする。この手帳を持つことにより、自立や社会参加に関する様々な支援制度・サービスが受けられる。
手帳の主な対象者
精神障害者保健福祉手帳の主な対象者を以下に示している。
- 以下を含む精神疾患・こころの病気を持つ人
- 統合失調症
- 双極性障害(躁うつ病・双極症)
- うつ病
- てんかん
- 薬物依存症
- 以下を含む発達障害(神経発達症)を持つ人
- 自閉スペクトラム症(ASD・自閉症)
- 注意欠如・多動症(ADHD・注意欠陥多動性障害)
- 限局性学習症(SLD・学習障害・LD)
手帳の等級
精神障害者保健福祉手帳の等級は、その障害の程度に応じて1級から3級まである。筆者が考える「だいたいの等級の目安」は次の通りである。
等級 | 生活面 | 医療面 | 就労面 |
---|---|---|---|
1級 | 常に支援が必要 ※1人暮らしは極めて困難 | 入院中は常に支援が必要 通院は常に付き添いが必要 | 就労継続支援による 「福祉的就労」にも 困難さがある |
2級 | 必要に応じて助言 ・支援が必要 ※1人暮らしには支援が必要 | 定期的な通院はできる デイケア利用は可能 | 「福祉的就労」はできるが、 一般就労は困難さがある。 ※障害者雇用で働ける場合も |
3級 | 一応できるものの、 ときどき難しさがある。 | 定期的な通院はできる デイケア利用は可能 | 「福祉的就労」はできる。 配慮を受ければ 一般企業で働ける。 |
以下では「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」(厚生労働省 2013)を引用・参考にしながら、もう少し詳しく説明する。必要な方は見て欲しい。
詳細はこちら
- 1級:「精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」
- 入院中の場合:院内での生活に常に援助を必要としているような人(支援がなければ療養生活が困難な人)
- 在宅の場合:付き添いがなければ通院ができない程度の人。家事や日常生活について常に支援を要する状態の人(常時支援がなければ地域生活は不可能な状況)
- 2級:「精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」
- 常に他人の支援を要するわけではないが、日常生活が困難な程度の人(必要に応じた助言・支援があれば日常生活は何とかできる)
- 一人で外出できるが、ストレスがかかる状況になると対応が難しい。定期的な通院やデイケア・福祉施設(生活訓練・就労移行支援・就労継続支援など)の利用はできる。(一般企業での就労には困難さがある)
- 3級:「精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」
- 日常生活・社会生活はできるものの、困難さを抱えることがある程度の人(強いストレスがかかる状況では支援が必要)
- デイケアや福祉施設(生活訓練・就労移行支援・就労継続支援など)を利用できる。障害者雇用などで配慮を受けながら働くことができる。
手帳を持つことによるメリット
精神障害者保健福祉手帳を持つことで、以下のような公的な福祉制度・サービスを受けられる。
- 所得税や住民税の控除
- ハローワークによる就労支援サービスの利用
- 公営住宅入居に際する優遇措置
また下記を含む民間事業者などが提供する運賃や利用料の割引措置などが受けられる。
- 鉄道・バス・タクシーといった公共交通機関の運賃割引
- 博物館・美術館などの入館料の減免
なお上記のような制度・サービスは、「障害者を健常者より優遇する」ためではなく「障害者が抱えた社会的不利を少しでも補う」ために用意されている。
今後当ブログでは「精神障害者保健福祉手帳を利用できる場所」を紹介する記事を作成予定である。しばらくお待ちいただきたい。
手帳の取得方法
申請するためには、精神疾患・発達障害による初診日から6か月以上経過していることも条件になる。
精神障害者保健福祉手帳を取得するためには、お住まいの市区町村の障害福祉担当課を通じて都道府県に申請する必要がある。申請後はお住まいの都道府県が申請内容を確認し、交付対象になるかの判定の上、都道府県から市区町村経由で手帳を受け取る。
詳しくはお住まいの自治体の障害福祉担当課の窓口や公式Webサイトでご確認いただきたい。また当ブログでも「一般的な申請方法」を以下の記事で詳しく取り扱っている。ぜひお読みいただきたい。
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