よく議論して取り組んで欲しいこと
①生活保護制度の正確な情報発信と国民の理解促進
先ほども述べた生活保護制度に関しては、まだまだ取り組むべきことがある。
例えば「誰もが生活保護を利用できる社会の雰囲気作り」に取り組まなければならない。これは時間がかかると思われるが、政府が責任をもって粘り強く行う必要がある。
特に「生活保護バッシング」や「水際作戦」を含む以下のような行為は厳に慎まなければならない。
上記の行為は「いけないこと」だと厚生労働省など政府が発信すべきである。
それと同時に政府は生活保護に関する正確な情報を今一度ハッキリと伝える必要がある。
この取り組みだけでも、生活保護の申請をためらう人を減らせる可能性がある。
②障害年金制度改革:働きながらもらえる前提の制度へ
障害年金制度は以前より様々な課題が指摘されている。その中でも現在の障害年金制度が「働きながらでももらえる前提」にはなっていないという課題がある。
これは「精神の障害」(精神障害だけでなく知的障害・発達障害を含む)で障害年金をもらっている人・もらおうとする人にとって不利益になっている。
精神の障害では、「就労能力」が障害年金の支給・不支給の判断に影響を与える。
現状でも一応「障害認定基準」や「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の通りに判断すれば、現に働いていても直ちに障害年金不支給になるわけではない。
ところが障害年金の不支給に関する報道によると、ガイドラインの等級判定の目安より低く判定され、下記のような不利益を被った人もいる。
やはり今後障害年金制度を改正して、働きながらでももらえる前提の仕組みに変更すべきである。
③高齢者や障害者に対する生活保障制度の創設
国民の「生存権」をより積極的に保障する観点から、障害者や高齢者といった「働くことが困難な人々」への生活保障制度を今後検討して欲しい。
もちろん生活保護制度や公的年金制度(老齢年金・障害年金)とも関連するため、時間をかけた議論が必要になる。
例えば老齢基礎年金・障害基礎年金の金額の低さゆえに、自立した生活ができない低年金者がいる。低年金者は家族と同居したり生活保護を併用したりする人が多い。
それと障害年金について、厚生年金保険料を納めてきたにも関わらず、初診日の都合で障害厚生年金が受け取れない人が実際にいる。その場合その人は障害基礎年金しかもらえない。低年金者になる。
この低年金者も多く利用する生活保護制度を新たな生活保障制度に変更し、生活保護受給者に課せられた様々な制限を緩和できないだろうか。
例えば以下のような案はどうか。
- 障害者や高齢者のいる「世帯」ではなく障害者や高齢者「個人」単位で給付する
- 自動車を「財産」と捉えることを止め、所有要件を緩和する
- 低年金者に対する金銭給付を行う
- 就労継続支援B型事業所の利用者に対して、「工賃に上乗せする形で」国が金銭給付する
④福祉・介護労働の社会的評価の向上
福祉や介護の仕事に対する社会的な評価を引き上げる具体的な行動を取って欲しい。もちろん賃金の大幅な引き上げは含まれるが、それに限らない。
福祉や介護の労働者は典型的な「エッセンシャルワーカー」である。誰かが福祉や介護の現場で働かないと、生活が成り立たない人が確実にいる。寝たきりの高齢者や介助を要する障害者を支える施設職員を想像すれば分かりやすい。
それと「福祉や介護の仕事は誰でもできる」と考える人がいる。だが実際は誰でもできるわけではなく、専門性が求められる。
福祉・介護職員は、支援を行う相手の人権や尊厳に十分配慮し、その人のより良い人生や生活に貢献することが要求される。相手は職員の言動一つで人権や生活、さらには生命を脅かされることもある。
そのような福祉や介護の仕事は、決して「誰でもできる」簡単な仕事ではない。このことを社会に広めるための取り組みを政府にはお願いしたい。
コメント