私の思う「ピア精神保健福祉士」の定義
「精神保健福祉士」と「ピアサポーター」の支援基盤の違い
これまでの話を踏まえると、精神保健福祉士の支援の基盤は、「専門的な知識・技術」である。一方ピアサポーターが行う支援は、「立場や経験」を基盤とする。つまり、精神保健福祉士とピアサポーターは、そもそも支援のベースとなるものが異なる。
そこで、精神障害・精神疾患の当事者が、精神保健福祉士国家資格とピアサポートに関する事項の両方を習得すれば、そのまま「ピア精神保健福祉士」になれるのだろうか。私は正直疑問に思う。
例えば、精神保健福祉士の国家資格を持ち、障害者ピアサポート研修を修了した精神障害・精神疾患当事者が、地域の福祉施設で利用者の支援に当たるとする。
その場合、ひょっとしたら「専門的な知識・技術」と「立場や経験」のどちらかを選ぶことが求められるかもしれない。
言い換えれば、精神保健福祉士とピアサポーターのどちらかの立場を脇に置く必要がときにはある。支援を行う利用者に応じて、どちらが必要かを選ぶことになるのである。
それと、精神保健福祉士国家資格所持・障害者ピアサポート研修修了の両方を満たす精神障害・精神疾患当事者が、福祉施設の一般求人に「精神保健福祉士」として応募することもある。
その際、「障害者ピアサポート研修修了」と履歴書に書くこと自体はできる。しかし、仮に採用されたとしても、施設側から障害者ピアサポート研修のことがあまり考慮されない場合がある。
そうなると、福祉施設でその当事者はあくまでも「精神保健福祉士」として働くことになる。逆に「ピアサポーター」としてその福祉施設で働くことは難しい。
要するに、「精神保健福祉士」「ピアサポーター」のそれぞれが行う支援は、あくまでも別物だと思われる。両立は困難な場合が多い。

私見:「ピア精神保健福祉士」の定義
では、「ピア精神保健福祉士」はどのような人だろうか。ここからは、あくまでも私個人が考える「ピア精神保健福祉士」の定義を述べる。
そもそも、精神保健福祉士国家資格を持ち、ピアサポートに関する知識を十分に理解していることは、「ピア精神保健福祉士」になるためには必要な条件である。
それに加えて、精神保健福祉士・ピアサポーターの両方の立場を理解し、支援の際にこの2つを相手に応じて使い分けられることも求められる。具体的には、支援を行う相手に応じて「専門職的な関わり」「立場・経験を活用した関わり」のよりふさわしい方を使うことが必要である。
もしかしたら、精神保健福祉士国家資格とピアサポーターの経験をともに持つ人の中には、先ほど述べた2つの関わりを「ごちゃ混ぜ」にする人もいるかもしれない。ただこの「ごちゃ混ぜ」状態で他の精神疾患・精神障害当事者を支援することで、その当事者に悪影響を与えないだろうか。
例えば、相手が「専門職的な関わり」を必要としているにも関わらず、自らの経験を押し付けるような形になると相手はどうなるだろうか。
または、相手が「同じ当事者としての経験・知識を聴きたい」という希望があるにもかかわらず、専門的な知識を基本とした話を延々としてしまうと相手はどう思うのだろうか。
どちらも支援を行う精神保健福祉士兼ピアサポーター自身は満足できるかもしれない。だが、少なくとも支援を受ける相手はあまり好くは思わないはずである。
もちろん実際には、「専門職的な関わり」「ピアサポーターとしての関わり」双方が要求される時や、この2つのどちらに重きを置いて関わるべきか迷う時もある。その際精神保健福祉士兼ピアサポーターは、どのようなスタンスで支援を行うかをよく検討すべきである。
場合によっては、職場の同僚や上司との相談の上、役割分担もできる。例えば、先輩の精神保健福祉士に専門職的な関わりをお願いし、自らはピアサポーターの立場で支援を行うことも考えられる。



コメント
初めてコメントします。精神保健福祉士からピアサポーターとなるケースであれば、仰る様な課題が存在すると思われます。他方で、当事者のピアサポーターからのキャリアアップが確立されておらず、精神保健福祉士の資格取得も選択肢となり得るかもしれません。但し、現実的な問題として、リスキリングに係る経済的負担が出来るかどうかも、あるのではないかと思います。
コメントありがとうございます。
もともと精神保健福祉士として活動してきた方がピアサポーターになる場合、うまく当事者性を活かした支援ができるのか、という課題がありそうですね。「専門職としての知識」とのバランスを取ることが強く求められそうです。
それと、私はピアサポーターとして活動した後に、精神保健福祉士の資格を取得した立場ですが、ピアサポーター・ピアスタッフのキャリアアップの問題はすごく感じます。
現在の「障害者ピアサポート研修(フォローアップ)」だけでは十分ではないです。だからといって、精神保健福祉士の資格取得を目指すとなると、多くのピアにとって、経済的負担・精神的負担はかなり強いだろうと考えております。