障害年金制度改正への議論についての考察
この話をする前に…
5つの議論の要点を見る(再掲)
- 初診日要件と「延長保護」「長期要件」
- 事後重症の場合における障害年金の支給開始時期
- 保険料納付要件の特例「直近1年要件」
- 障害年金受給者の法定免除について(年金保険料)
- 障害年金と就労収入の調整
上記の議論の要点のうち、1~3は今後障害年金をもらう可能性のある現役世代全員に関わる。それと4と5については、この現役世代全員だけでなく、すでに障害年金を受給している人も関係する。
そこでここでは障害年金をすでに受給しているか、まだしていないかの2つの場合に大きく分けて考察する。
障害年金をすでに受給している人にとって…
「有期認定」の人にとっては大きくプラスになる可能性がある
まず4に関しては、もし今後障害年金受給者の法定免除が「国民年金保険料納付済み」扱いになれば、「有期認定」の障害年金を受給している人には大きくプラスになる。
特に老齢基礎年金の減額を防ぐために、あえて
「障害年金を受給しながら国民年金保険料を納付し続ける選択」
をする必要がなくなる。
また国民年金保険料が免除される結果、その分を現在の生活費に充てられるようにもなる。
要するに「有期認定」の障害年金受給者にとっては、現在の生活にも老後の生活にも経済的な面でいえばプラスになる変更である。
「永久認定」の人にとってはマイナスになる可能性も
一方「永久認定」の障害年金をすでに受給している人は、4が実現した場合の影響は小さい。というのも老齢年金をもらわない選択肢もあるからである。
「永久認定」の障害年金と老齢年金を比較すると、障害年金の方が有利な場合がある。特に障害基礎年金と老齢基礎年金の比較では、基本的には障害基礎年金の方が受給者にとっては有利である。
障害年金は非課税所得だが、老齢年金には課税所得の扱いである。また障害基礎年金の支給額は、老齢基礎年金と同じかそれ以上になる。
ただここで問題になりそうなのは、障害年金をもらいながら厚生年金保険に加入している場合である。
「永久認定」の障害年金受給者(1級・2級)は、事実上老齢厚生年金のため「だけに」厚生年金保険料を納めることになる。つまり厚生年金保険料のうち「国民年金保険料相当分」がまるまる「払い損」になってしまう。
厚生年金3級受給者は、障害厚生年金のみ受給し、障害基礎年金の部分はもらえない。ただし今後等級が上がる場合がある。
それと5の影響も心配される。
「永久認定」の障害年金受給者は、(「20歳前障害」による障害年金を除き)現行では働いて得た収入がいくら多くても、障害年金の支給額は減少しない。
ところが5が実現すれば、働いて得た収入が増えれば障害年金が減らされたり支給停止になったりするようになる。
つまり現在「永久認定」の障害年金をもらいながら働いている人にとっては、「有期認定」の障害年金受給者と同様に、
可能性すらある。
もちろん障害年金の減額・支給停止の基準の設定次第だが、「働いたら損する」と捉えられないかどうかが私は気になっている。
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