はじめに
最近、生活保護を受給しているというあるX(旧Twitter)ユーザーの旅行に関する投稿が話題になった。この記事では、それをきっかけとして、生活保護受給者が旅行することについて一般論として考える。
この記事をまとめるきっかけについて
X(旧Twitter)ユーザーで生活保護を利用しているという「kuro|発達障害でも夢を掴む」氏(以下、kuro氏)が、2026年10月22日より北海道旅行をしている旨のポストを複数投稿された。
kuro氏によると、生活保護費をやりくりして旅行費用を捻出したことや、移動手段として格安航空を利用したこと、北海道の有名ラーメン店で食事をしたことなどをつぶやかれた。
現在、一連の投稿が確認できないため、以下に当時筆者が保存したスクリーンショットを掲載する。
クリック・タップしてスクリーンショットを見る



上記を含むkuro氏の一連のポストに対し、大変多くの賛否両論の反応があった。
私自身も実際にkuro氏のポストを引用する形でコメントした。
その後2026年10月26日には、kuro氏が北海道旅行に関する一連の投稿が大きく炎上したためつらい思いをしていることや、Xの投稿をしばらく休止する旨のポストをする事態になった。
私はこの一連の流れを踏まえて、生活保護受給者の旅行について一般的にどのように考えられるのかが気になった。そこで今回この記事をまとめることにした。
この記事を特に読んでほしい人
留意点
この記事は、kuro氏個人を批判または擁護することを目的としたものではない。あくまでも生活保護受給者の旅行について、一般論として考えるものである。
それとkuro氏自身が実際に北海道旅行をしたかどうかや、実際に生活保護を受給しているのかどうかについては、この記事では取り扱わない。
生活保護制度の概要を知りたい方は、以下のWebサイトをご覧いただきたい。

生活保護受給者は旅行しても良いのか?
私としては、「生活保護受給者が旅行しても良いか・悪いか」という視点だけでなく、「旅行後も無理なく生活を続けられるのか」という視点を踏まえて検討することが大切だと考える。
それを踏まえて、結論から言えば、次のようになる。
- 生活保護を受給しているからといって、一律に旅行を否定する必要はない。
- ただし旅行によってその後の生活が苦しくなる場合は、慎重に考える必要がある。
この2点について、以下で詳しく述べる。
生活保護受給者の旅行を一律に問題と考える必要はない
生活保護受給者が旅行することについて、旅行そのものを一律に禁止する規定があるわけではない。
また、「生活保護実施要領」1 では、旅行を含む海外渡航については一定の取り扱いが示されており、一時的かつ短期の海外渡航で、引き続き日本国内に居住する場合には、海外渡航だけを理由として生活保護を停止・廃止することはできないとされている。2
旅行の目的によっては、交通費や宿泊費に充てられる金銭が収入認定の対象となる場合がある。
また一般的な余暇としての国内旅行に関しては、「生活保護実施要領」に関連する記載は見つけられなかった。そのため旅行を検討する場合には、必要に応じて事前に担当のケースワーカーに相談すると良いと思われる。
次に生活保護制度の目的は、
生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長すること
厚生労働省(発行年不明)「生活保護制度」(2026年10月31日アクセス)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html
である。
旅行は基本的には余暇活動の一つであり、それ自体が経済的な自立に直接つながるものではない。
それと憲法や生活保護法が「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しているからといって、旅行できること自体が個別具体的に保障されているとまではいえない。
一方で、「健康で文化的な最低限度の生活」は、単に生命を維持することだけを意味するものでもない。生活保護法第3条も「健康で文化的な生活水準」を維持できることを求めている。
したがって、余暇活動である旅行をすること自体が、ただちに生活保護制度の目的や趣旨に反すると考えるのも適切ではないだろう。
旅行によって生活に悪影響がある場合は慎重に
しかし、旅行によってその後の生活に支障が出るおそれがある場合は、慎重に考える必要がある。
例えば、以下のような場合が考えられる。
- 旅行費用によって、食費や光熱費などの日常生活に必要なお金が不足する
- 家賃や公共料金など、優先して支払うべき費用が賄えない
- 生活必需品の買い替えなど、近いうちに必要な支出がある
- 旅行費用の捻出によって、その後の家計に大きな負担がかかる
繰り返しになるが、旅行すること自体を一律に問題と考える必要はない。だが、旅行費用を支出することでその後の日常生活に要するお金が不足してしまいそうな場合には、慎重に判断することが求められる。
まとめ
ここまで生活保護受給者の旅行について考えてきた。生活保護を受給しているからといって、旅行すること自体を一律に否定する必要はないだろう。
一方で、旅行によってその後の生活費が不足するなど、日常生活に支障が生じるおそれがある場合には慎重に検討する必要がある。
やはり「生活保護受給者が旅行しても良いか・悪いか」だけではなく、「旅行後も無理なく生活を続けられるのか」という視点で考えることが大切ではないだろうか。
最後に…
これはあくまでも私自身の思いだが、生活保護受給者の旅行について、節約しながらうまく旅費を捻出して、ときおり旅行を楽しむ程度であれば、世間はわざわざ厳しい視線を向ける必要はないように感じる。
旅行によって気晴らしして、その翌日以降の生活の活力とすることは、生活保護受給者には認められないのだろうか。
生活保護を利用しているという理由だけで、その人の余暇の過ごし方まで必要以上に厳しく見る必要があるのか、私たち一人ひとりが考えてみても良いのではないだろうか。
- 厚生労働省公式サイトに、2026年4月施行予定分のものとして掲載されている。厚生労働省(2026)「2026(令和8)年4月1日施行 生活保護実施要領等」(2026年10月27日アクセス)https://www.mhlw.go.jp/content/001677054.pdf ↩︎
- 「2026(令和8)年4月1日施行 生活保護実施要領等」p99を参照。 ↩︎
最後までご覧いただきありがとうございました。こちらの記事もあわせてご覧ください。
生活保護バッシングについて関心をお持ちの方へ
生活保護と自動車の関係について気になる方へ
または「テーマ別ブログ記事まとめ」にお進みください。
この記事の内容に関連して、生活保護に関する制度の理解や現場の実態を知るための参考文献を紹介します。関心をお持ちの方は、必要に応じて手に取ってみてください。
こちらは、桐生市で実際に起きた「1日1,000円」支給問題を通じて、制度の運用の歪みと行政の責任を描いた記録です。生活保護行政の構造を知りたい方に役立つ一冊です。
こちらは、生活保護の申請手続きや誤解されやすいポイントを、実例とともにやさしく解説した実用ガイドです。制度に不安のある方や支援者が最初に手渡しやすい内容です。






コメント